早いものでコーチになって1か月が過ぎた。
それとともにバスケ少年達のレベルは確実に上がっていった。
自分で言うのも何だが指導者の指導次第だ。
あとは個人の技術を高めていくしかない。
「コーチ、ちょっといいですか?相談がありまして」
練習が終わった後、こうへいに呼び止められた。
「どうした?こうへい」と俺。
「明日時間とれませんか?」
「明日は練習休みだぞ。整体院は午後から休診だから午後からならいいけど」
「コーチ、ありがとうございます。明日午後14時頃整体院に行きますね」
「わかったよ」
こうへいは何だか思い詰めた感じだった。
翌日の約束の時間通りにこうへいは現れた。
「へぇー、これがい骨の模型?すげ〜」
こうへいは、がい骨の模型や整体院の色々なものに興味深々だった。さすがに中学生だ。
「麦茶でいい?それよりこうへいの用件は?」
「あ、仕事で疲れてるのにすいません。実はバスケのことで…」
「だろうね、俺に相談ってバスケ以外ないもんな」
「で、バスケの何を聞きたいの?どうやったらもっと上手くなるかなって話?」
「それも興味あったんですけど、実は…俺、バスケ辞めようと思ってます。」
「え、何で」俺は予想外の話に驚いた。
こうへいは、めっちゃバスケの練習に励んでいたし実際に成長もしたことを知ってるから。
「こうへい、理由は?」
こうへいは黙り込む。
「バスケが嫌になった?」
「バスケは大好きです」
「じゃ、技術的に伸び悩んで行き詰まりを感じたとか?」
「それもあるけど…バスケしてるとお金かかるから」
「お金?」
「俺んち、母子家庭で妹も2人いるし、色々お金かかるから」
「それはお母さんに言われたの?」
「いや、直接は言われてないけど何かわかるんだよね」