「こうへい、そのベッドにうつ伏せで寝て」
「え、」
「いいから、整体するわ」
「俺、整体のお金払えないよ」
「可愛い教え子から金とるコーチなんかいるかよ、
はい、早くうつ伏せになれって」
俺はこうへいの整体を始めた。
そう言えば、俺が初めてコーチとしてこうへいを病院へ連れて行った時に母親に電話した時も車がないから行けないとの返答で違和感を感じていた。
母子家庭で金銭的に余裕がないのは確かなようだ。
ただ、市営住宅のアパートに送って行った時の母親の態度は普通に我が子を心配して、俺にお礼を言ってきた。
「こうへい、沢山、整体してきた経験値から言ってこうへいの身体はしっかりしてるし、まだまだ身長も伸びるし、バスケに最適な身体だよ。俺はこうへいにバスケ続けてほしいな。何よりこうへいがめっちゃバスケ好きで練習してるの見てるから」
こうへいの目からは涙がこぼれていた。
「こうへい、バスケ続けろよ、お金の心配はないし、お母さんには俺から説明するから」
「かーさんに、なんて言うの?」
「任せとけ」
俺はこうへいの母親に電話して説明し理解を求めた。
「お母さん、理解してくれたよ、未来のバスケの才能ある息子に俺が投資したいって言ったら、はい、電話かわるね」
「わかった、はい」とこうへいは母親に返事して電話を切った。
「今日、泊まっていいって」
こうへいの瞳からまた涙がこぼれ落ち、俺は思わずこうへいを抱きしめた。