僕はケイタくんに約束の5000円を手渡した。ケイタ君はいつものように「ありがとうございます、助かりました!また良かったら」と言って受け取った。「じゃあ、これで…今日はありがとうございました」と言ってドアに手を掛けようとするケイタくん。
『今日どこに泊るの?』僕は思わず聞いてしまった。ここでケイタ君を帰してはいけないような気がしたから。ケイタ君は「ネカフェ探します」と明るく答えた。『それなら…嫌じゃなかったら…ここに泊っていけば?』僕はかなりキョドりながら言葉を振り絞った。
こんな事を言うなんて下心があるように聞こえたかなとか、断られたら嫌だなとかいろんな事を一瞬で考えた。
「えっ、いいんですか?」
あっけなかった。ケイタくんは嬉しそうに答えてくれた。
それから、ケイタ君はコインロッカーに預けてる荷物を取りに行き、30分程で戻ってきた。
その30分の間に僕は使ってない部屋にお客さん用の布団を持っていき、何も敷いてないフローリングに新品のラグを敷いた。ここに引っ越してきて、すぐに買ったラグだけど使わない部屋に何かするのは面倒でずっと放置していた。まさかこんな形で役に立つとは思わなかった。
ケイタくんが家に戻ってくると、僕に「これ」と午後ティーを手渡してくれた。彼なりのお礼なんだと思ったから素直に喉乾いてたから助かるよ!と言って受け取った。ケイタくんの荷物を部屋に置いて、リビングに移動。
ただ、うちのリビングはキッチン前にあるテーブルとイスだけの質素なもの。とりあえず、テーブルに座って『ご飯はもう食べたの?』と聞くと「いえ、まだ…ちょっとお腹空いてて…」と申し訳なさそうに答えた。昨日自分で作っていたカレーがあったから『手作りなんだけどカレー食べる?』と聞いたら「はい!!いいんですか?」と嬉しそうに答えてくれた。